興福寺南円堂の四天王(運慶展)
2017年11月12日

image1 (10)(興福寺南円堂・持国天立像 運慶展図録より)

 

運慶展の図録を見ていたら、「うわかっこいいな…」という写真があって、ブログに載せたくなったので書くことにしました。

 

そういうわけで興福寺南円堂の四天王なんですけど、写真の方は持国天ですね。どうでしょうか。かっこよすぎませんか。南円堂ではだいたい年に一度の御開帳のときくらいにしかお会いできない方々です。私も一度南円堂でお会いしているんですが、今回の運慶展ではそのとき以上の凄まじい威圧感を放っていたような気がします。

 

まず、でかいですよね。いい具合にでかい。2メートル前後です。これは本人感がありますよね。個人的に、この人間よりちょっと大きいくらいっていうのが「それっぽい」と感じます。十二神将像とかだと1メートルくらいのものが多いですが、四天王像はたいていそれよりも大きく造られますから、やはり本人感が出やすいですね。

 

多聞天は高くかかげた左手の宝塔を見上げる姿勢をとりますが、こんなにも動いてる多聞天って珍しいんじゃないでしょうか。躍動感が尋常じゃない。宝塔をかかげる多聞天といえば東大寺戒壇院の像も思い浮かびますが、南円堂像はよりダイナミック、それでいて動きが柔らかいです。運慶をはじめとする慶派仏師は力強い天平彫刻をリスペクトしていたようなので、当然戒壇院像も参考にしたのでしょう。しかしそれをただの模刻でなく、さらに大胆にアレンジできてしまうのがすごいですよね。

 

増長天は他のメンバーに比べるとオーソドックスな威嚇姿勢で、写真で見てもそれほど印象的でない気もするんですが、会場で目の前に立つとやはり違います。こちらを見下ろす増長天と視線が合うような位置に立つこともできましたが、改めてその表情の素晴らしさに見惚れましたね。怒ってるんですけど、誇張しすぎてなくて品があります。

 

広目天は四体の中ではあまり目立たないかもしれません。広目天といえば「筆と巻物を持つ」という印象が強いですが、南円堂像は戟を持っているので、増長天とイメージがやや重なりますね。(筆と巻物は古い年代の広目天像に多いようです)本などで見る写真は、体を正面から撮り顔が右向きになっているものばかりなんですけど、このアングルはあまりかっこよくない気がします。今回、顔を正面からまっすぐ見てみたらすごく決まっていたんですよ。このアングルは図録にも載ってなかったんですが、ぜひ何かに掲載してほしいと思いました。

 

で、最後に持国天なんですけど、この方がもっとも「うわ……」ってなりますね。なんでしょう、他の三体とは雰囲気が異なります。剣を持つ右手を上げ、剣先は下に向けて左手を添えるという独特な姿勢なんですけど、動的でありながら静的でもあるというか。揺らめくような、くねらせた体からは今にも一撃必殺の剣技が発動されそうだし、うつむき加減で前を見ていない表情も、すべての敵の動きを察知しているかのように見えます。他のメンバーは「決めポーズ感」があるんですけど、持国天だけは臨戦態勢。緊張感のみなぎり具合が数段上だと感じます。右手の剣に左手を添える持国天というのは、やはり戒壇院の像や、他にも唐招提寺の像などに見られる造形ですが、この南円堂の方から発せられる手練れ感といったらまあすごいですよね。

 

以前からかっこいい四天王だとは思っていましたが、今回の運慶展ではライティングなどの影響もあってか息をのむ迫力でした。なんとなく、天部像って展覧会映えしやすいかもしれませんね。如来や菩薩より存在が具体的で、より「カタチ」性が強いというか。そんなことを思いました。